冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
(……肌にキスしたくて、たまらない目をしてる)

その強い目を見て、ミリアは胸が震えた。その気持ちが『コンスタンシア姫』に向けられているものだと思って苦しくなる。

身体を重ね合わされている状況に、もっと慌てなければと思う。

けれど怖いと感じるどころか、彼の温もりに胸は勝手にときめいていた。

いつの間にか指を絡めて握られている手にも胸は高鳴った。温もりを感じていることが嬉しい、と思っている自分も悲しくなる。

「たまない。どきどきしている君からは、とても甘くていい香りがする」

興奮しているのだろう。獣みたいな熱い吐息をもらして歯と舌で喉を愛撫され、ひくんっと身体がはねた。

「ひゃっ……」

「もっと刺激してやれば、もっと可愛い君が見られると思うと、歯が疼く」

首筋にキスをし、指の間をこするように手を握り直してきた彼の大きな手に、すがりたくなる。

「アンドレア様、お願いです、もう」

彼がこうしたいと思っている相手は、コンスタンシアだ。

つらくて、苦しくて、吸い付かれた拍子に甘く疼いた感覚から目をそらすように、ミリアは顔を横に向けた。

「まだ早いことは分かってる。君が頑張り屋で、真っすぐな性格をしていることもよく分かった。だから、まだ、待つ」

優しい声につられて視線を戻した。

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