冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
七章(じれじれの終止符と、大団円)
愛おしすぎた。我慢できなかった。
興奮のせいで眠りは浅く、アンドレアは早朝に騎士たちの訓練指導をする師団長らと加わり、ミーティングに参加したりと精力的に動いていた。
キスに戸惑っただろうか。
けれど昨夜、ミリアの目はアンドレアを熱く映し出していた。
(――一人の男として、俺のことを見ていた目だった)
そう分かって、彼は帰りたくなくなった。
けれど、数秒でも長くいたら発情に耐えられず、アンドレアは彼女を自分のものにしていただろう。
次の軍事仕事のスケジュールを頭に描きつつ、とある内容に関わっている者を移動しながら探す。
それでもアンドレアの頭には、ミリアのことばかり浮かんでいた。
日々、強まっていく甘い香りを感じていた。
『もういいよ』
異性のフェロモンは、つがう相手が気持ちの合図を送るものだった。
その香りと共に初夜を迎えるのが、獣人族の婚姻の習慣だ。そうすることで発情相手を限定する、ということに失敗がなくなる。
「ストレイ! ちょうどいいところにいた」
ようやく見付けた関係者の一人に声をかける。
半ば駆け寄るアンドレアを振り返り、二十二歳の彼より五歳年上の、宰相補佐ストレイが煩わしそうに若干眉を寄せた。
ふてぶてしく顔に出してくれるところも、アンドレアは気に入っていた。