冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
お礼の品を届けるという名目で、隣国の小さな国、サンスティール王国のパーティーに参加させてもらった。

しかし、会いにいったら別人だったのだ。

「結婚はすでに成立した。彼女はお前の妻で、お前は夫だよ」

聞こえてきた父の言葉に、むかむかした。

(いまだ〝あの子〟が忘れられない、なんて父上には死んでも言いたくないっ)

とはいえ、縁談をことごとく回避してきた方法は露骨で、もうバレバレだとは思っている。みんな何も言わないのも、父が好きにさせているからだろう。

父には、こんなアンドレアが滑稽に見えているかもしれない。

(猶予は十分に与えた、だから諦めて結婚しろ、ということか?)

今のところ、アンドレアは誰とも結婚するつもりはなかった。

昔、一度だけ見たあの子の存在がずっと胸を占めている。

まったく謎な一件だった。不思議なことに、王女と同じ格好をしながら、彼女は王女ではなかったのだ。

未練たらしいのは分かっている。しかし、もう約十年その影を追い続けた。

(他の女のことを考える気も、指一本触れる気も起こらない)

ざわりと胸に嫌悪感が込み上げ、アンドレアは父へはっきりと告げる。

「今すぐ国へ送り返してください」

「ははは、面白いことを言う。だがそんなことはできない、これは国同士のことだ。国内の貴族とはわけが違う。お前も分かっているだろう?」

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