冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ミリアは、ひょいっと飛び降りて中へと入った。男性は身軽なことを笑っていた。

森まではあっという間だった。

思っていたより距離も近かったようだ。大人の足で歩くと直径一時間かかる森林になっているので、入るのは危ないよと男はわざわざ教えてくれた。

下車したミリアは、お礼を言って彼の馬車が小さくなるまで見送った。

「よし、行くか」

早速森へと踏み込んだ。町が見えてきたら何か考えようと思って、とにかく移動時間を短縮するため走ることにした。

動いていないと忠誠心に苦しめられた。

国交のことを考えれば、この行動はアウトだ。

それでいてミリアは、ただアンドレアが想い人と間違った相手を抱くことを阻止するためを考えて、咄嗟に行動に出てしまったのだ。

(――私は姫様のことを一番に考えないといけないのに、真っ先に思考の判断にしたのは、アンドレア様だった)

走りながら、涙が出そうになった。

今でも忠誠心はコンスタンシアのものだ。それでも、同時にンドレアのこともとても大切に思ってしまう。

恋をしたことが、つらい。

誰かを好きになることが、こんなにも苦しいなんて知らなかった。

(よくしてもらったあの人に、ひどい顔をして欲しくないの)

傲慢だろうか。

知らずのうちに失恋してしまった獣人王子。ミリアはアンドレアがそれ以上に傷ついてしまうことを恐れ、回避する道を選んだ。

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