冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
コンスタンシアのためにいなければならないのに、彼を考えて行動した。

一番に主人のことを考えて行動しなくてはいけないのに、アンドレアを優先したのだ。

(ごめんなさい姫様、ごめんなさい――)

アンドレアにとって、ミリアは〝コンスタンシア姫〟だった。

優しくしたのも、夫婦で居続けることを決めたと宣言してきたのも彼女への言葉だ。彼の元に、ミリアの居場所はない。そう思うと悲しかった。

(アンドレア様に、身代わりじゃない私自身を見て欲しいと思ってしまう)

苦しい。そう思ってくしゃりと目を細めたミリアは、注意を怠ってしまったせいで前方の異変に気付くのに遅れた。

次の一歩を踏み出した足が、不意にずるっと滑った。

「ほぇっ?」

まさか、と思った自分の声がとても間抜けに聞こえた。

何が起こったのか瞬時に察した。こんなことしている場合じゃないのに、まずい。けれど思考は長くは続かない。

(私、任務を全うして姫様に謝らなきゃならないのに――)

なのに、へまをした。

そう理解した次の瞬間、ミリアは高い傾斜にずるんっと身体が落ちていた。

「ほぇええええええっ!」

気絶する瞬間まで続いたそんな大間抜けな大絶叫は、森の外まで響き渡っていた。

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