冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
エピローグ とんでも獣人国王による、強制結婚の結末は
『――ほんと、バカな子ねぇっ』
『――無茶をしすぎるんだよ。失うものがないから、どんどん先へ進めるんだろうなぁ』
『失うものなんてたくさんあるわよっ。私たち、みんなあの子のこと大好きなのに! 家族なのにっ』
声が、聞こえる。
懐かしい人の声だ。ガイエンザル国王と、コンスタンシア姫……。
(姫様、泣いてる?)
似たやりとりを、いつだったか聞いた気がする。
夢を見ているのかもしれない。
まどろみの中でミリアは、たしかあれは暴漢から彼女が乗っていた馬車を守った時だったと思い出していく。
この命に代えても守ると誓った。
ガイエンザル国王に許され、専属侍女として付けられてから、何度目かの移動道中で起こった事件だった。
身体が小さかったから歯が立たなかった。武器を取り上げられて殴り倒されたミリアは、それでも敵の足に食らい付いて馬車へ行かさないよう足留めした。
決して離すものかと歯を食いしばった。
仲間の護衛が駆け付けて『もういい!』と言うまで、彼女は敵を放さなかった。
その一件で、ミリアが希望していた通り、戦う術を教えることを王族護衛騎士隊の隊長が許可してくれたのだ。
彼女を早死にさせないためだった。
ミリアは目を覚めたベッドの上で、コンスタンシアにバカだと怒られた。