冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
『バカなのよ。私を守りたいと必死になって、二回目の刺客との遭遇でも無茶をしてまた殴られていたんだから!』

泣きながら憤慨するコンスタンシアの声がする。

(ああ、罪悪感のあまり夢を見ているんだ)

ミリアは、好きになった人を騙し続けた胸の痛みに涙が出そうになった。アンドレアにまた木から落ちるところを見せてしまったのだが、思えば護衛事件も同年に二度目があり、コンスタンシアを泣かせて悔いた思い出があった。

その時、優しい大きな温もりが額を包み込んだ。

(あ、とても気持ちいい……)

『資料を読んで知っている。こけて、武器が飛んで行ったんだろう?』

アンドレアの苦笑が聞こえる。

『そう、抜けているのです。気合いが入りすぎるとミスするの。今回のも、きっとそうなんでしょうね。……ちょっと、露骨に嬉しそうにしないでくださる?』

『これは失礼いたしました。まったく、これからは目を離せないな』

『よろしく頼みますよ、アンドレア第二王子殿下。我が娘コンスタンシアだけでなく、私にとっても、ミリアは一番小さな末子のような存在なのです。城の者たちと、ずっと成長を見守ってきましたから』

これもまた、きっと夢だ。

ミリアの国の王と姫とアンドレアが、仲良さそうに話しているなんて――。

身代わりでなくて、ミリアとしてアンドレアの隣にいたい。

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