冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
いつもの賑やかなやりとりだと他の騎士たちも笑って、一人が「知らせてくる!」と部屋を飛び出していった。

「容姿のジョークはカイには地雷なんだよ」

「え、そうなの? ごめん。大丈夫だよ、私は並み以下だから!」

カイも含め、男たちが揃って沈黙した。

「…………笑顔で言うこと? お前、そこそこ美少じょ――」

「ねぇ、ここどこ? すごく広い寝室だね」

「あー、王宮の二階にある王族区の寝室の一つだよ」

騎士の一人が諦めた口調でそう答えた。すると解放されたカイが、襟元を直しながら追って言う。

「ちょっとした打ち身だけで済んで良かったな。鍛えているおかげだって、王宮医も関心してたぜ。丸二日寝てたけどな」

「二日!?」

そんなに眠り込んでいたなんて、十年前に風邪を引いて以来だ。

「待て、お前十年風邪知らずなのか!?」

「あれ? 私、声に出てた? ところでさ、なんで場所が分かったの?」

「あれだけ凄まじい奇声を上げて、アンドレア殿下たちの捜索チームと神獣『戦闘鋼犬』が見つけられないはずがないだろ」

それは鋼の体毛を持った犬型の神獣で、災害の環境下でも身体能力を損なわないので各国が重宝しているのだとか。

(アンドレア様自ら、私を探しに……?)

胸がどきどきしたミリアは、ハッと我に返る。

(ううん違うよっ、アンドレア様は姫様を探しに出たんだ)

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