冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
そこにいたのがオレンジ色の髪をした別人だったので、さぞ驚いたことだろう。

「……どう、しよう。バレたんだよね」

ミリアがナイトドレスの胸元を握っているのを見て、カイたちが身を案じる顔をした。

「なぁ、薄々思ってたけど、お前って殿下のこと――」

その時、扉が思いきり押し開かれた。

驚いて全員が咄嗟に口を閉じ、振り返った。そこに怒ったアンドレアの顔があるのではないかと予想していたミリアは、アイスブルーの目をこぼれ落ちんばかりに見開いた。

「姫様……?」

そこには、コンスタンシアの姿があった。

(え、嘘、これ夢?)

ぽかんと口を開けてそう思っていると、プラチナブメンドの髪を揺らして駆けてきた彼女にびっくりした。

本物だ。そこにいるのは、コンスタンシアだ。

慌ててミリアもベッドから下りると、駆け寄った。

「ひ、姫様っ、向かうのなら私が行きますから――」

「ミリア! ああっ、無事でよかった!」

合流した瞬間、ミリアはコンスタンシアに力いっぱい抱き締められていた。

(あ、姫様の温もりだ……)

抱き締めた感触も、彼女がまとっている彼女が好きなお香の匂いも、最後に分かれた時と何一つ変わっていない。

懐かしさに涙腺が緩んだ時、思いきり肩を掴んで引き離された。

「もうっ、ほんと無茶ばっかりして!」

「ひぇ、ごめんなさ――」

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