冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
二章 侍女の私、身代わりとして嫁いでしまいました

夫となった第二王子は、全然会いにも来ない。

(軍人王子でもあるので忙しいらしい……けど)

そう教えてくれた侍女たちは、いつか時間を見て顔を出してくださるのではないかと挙動不審で言っていた。

これは、ただ単に励ましているだけだとミリアは勘ぐった。

(――なるほど。ボイコットだな?)

自国でそう言ったら『口調!』と怒られそうだが、ここにはミリアしかいない。心の中なのでセーフだ。

つまりところアンドレアは、俺には関係ない、とでも言って引き続き独身のつもりで軍人活動やら公務やらに励んでいるのだろう。

いい度胸だ、さすがは最低王子。

(まっ、こっちとしては助かるんだけど)

あれから三日、ミリアも正体がバレる気配もなく過ごせていた。

ほぼ出歩いておらず、侍女がいない時間は窓のない位置で生活魔法をといて寛いだ。

放っておいていることについては、アンドレア自身、結婚したつもりがなくちっとも悪く思っていないのだろう。

いまだ女性を大勢はべらせているので、今後もここには来ないだろうとミリアは確信していた。

何せ、初日の夜から向かいの本殿に灯りがついて、たくさんの女の子たちが行きかう影が映っていた。

一昨日の晩も、昨日の晩もだ。

住居用ではないと侍女に聞いていたので、さすがのミリアも事情を察した。

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