冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
(……後宮、みたいなものになっているのかな?)

これを見たのが縁談の候補で来訪した貴族の女の子なら、昼以上の衝撃とショックを受けて逃げ出すだろう。

ミリアは任務でいるので、ショックはない。

なので、結婚した相手が、向かいの大きな建物で毎夜女の子たちをとっかえひっかえ楽しんでいることも関係ない。

そこについては落ち込む要素は何もない、のだけれど……。

(うわあああああ羨ましいっ! 私もお喋りしたい! 一人は寂しいよおおおおおお!)

見せつけるかのような夜の賑わいのせいで、ミリアのホームシックが限界に達しようとしていた。

まさか、ここにきて寂しくなるなんて予想していなかった。

思えばミリアは、大人しく過ごす子ではなかった。

コンスタンシアの侍女として付きっきりで見守り、少し暇があれば軍人たちの訓練に混ぜてもらって体力作りに励む。公務が終わる前に焼けたお菓子を取りに走ったり、彼女が暇をしないよう本の準備をしたり――。

と、行く先々でもまた楽しい会話があった。

なのに今、ミリアは部屋に引きこもってほぼ一人のきりの生活だ。

(向こうの建物は女の子たちがいっぱいで賑わっているのに、それに比べて私はぼっち……惨めな気持ちになるよ!)

わっと顔を手で覆う。

< 23 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop