冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
とりあえず、元気にそう答えておく。

不満も口にしないし、丁寧に仕えてくれるいい侍女ばかりだ。

(でも彼女たちがいる間は、生活魔法がとけなくてきついんだよね……)

魔法は体力を消耗する。

姫用のドレスといった装いも重いし堅苦しいしきついのに、長時間の生活魔法は体験してみると結構苦行だった。

「殿下はまだお顔を出されていないとか……お可哀そうに」

(そんなことないよ、かえって安全!)

――とは言えないので、とりあえず黙っておく。

他にも何かないかと侍女たちに尋ねられたが、ボロが出ても怖いので、大丈夫だと言って早々に彼女たちを帰した。

「はぁっ……、窓にカーテンをつけて閉めきったら不審がられそうだしね」

四角になった位置で生活魔法をとく。プラチナブロンドの髪が、ミリアの本来のオレンジ色へと変わった。

そもそも警備体制がばっちりな場所の窓というのは、主人の異変があった際に駆け付けられるようにとも考えられている。

護衛侍女としてそのへんの事情も知っているので、目隠しには乗り出せない。

(そんなことしたら、近くに警備か侍女を置かれそうだしね……)

せめて、自分の部屋にと与えられたこの『胡蝶の間』の建物内だけでも生活魔法を解けるようにしたい。

「さすがにそれは贅沢かなぁ……」

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