冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
自国を出た時には決心していたものの、ずっと生活魔法を駆使続けん柄の生活というのは想像以上に過酷だった。

(私の魔法って一番下のクラスだし、私には維持するのもきついんだよね……)

カーテンだって高価な品物だ。

こことあっちとそっちにも付けてください、なんて我儘を言っていいのかも悩んでしまう。

たぶん、意見したら希望は叶えてくれるだろう。

ミリアは、室内の光景を見てそう思った。初日はどこか殺風景だった室内には、今や豪華な品々が華を添えている。

世話を不要と言ったせいか、その日のうちに紅茶の道具が届き、本、刺繍セット、美容磨きのための道具といったものもどんどん追加されていた。

(……そもそも姫が自分でできるように、というのも珍しいよね)

ミリア自身が王女付き侍女だっただけに、一人の生活ができる環境がこうも整えられた姫の私室、という光景も物珍しい。

もちろん、それらはミリアが要望した品々ではない。

実際はただの侍女なので、そんな畏れ多いことできるはずがなかった。

(品物を用意したのが第二王子の指示じゃないとすると……、陛下だよね?)

つい、予備のティーポットを持ち上げてしげしげ眺める。

強制結婚だったのに、結構待遇がいいなと思ってしまう。ティーポットも用途別のものと、茶葉も置ける台まで先日騎士たちが運び入れていた。

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