冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
三章 身代わりの花嫁なのに、旦那様(今だけ)が構ってきます!?
その翌朝。
支度を整えたのち、ミリアは侍女たちの報告に目を疑った。
「……あの、これはいったい?」
食卓の支度が進む円卓のそばで、侍女の一人から手渡されたのは美しい花束だった。
「アンドレア殿下からの差し入れですわ」
「え」
つい、可愛くない姫らしからぬ声が口から出た。
「姫?」
「あっ、そ、そうなのですね。えーと、兵か、騎士が届けてくださったのですか? お礼を伝えておいていただけると助かりますわ」
「言伝は頼んでおきますわね。ふふっ、でも」
侍女たちが目を合わせ、秘密めいた微笑みを浮かべる。
なんだろう、ちょっとうらやましい……とか思っていると、目の前にいた侍女の目がミリアに戻った。
「実は、殿下がご自分で持ってきていらしたのですよ。姫がご支度中であるとお伝えしたら、邪魔しては悪いのでこのまま仕事に行く、と」
「ごほっ」
口にした侍女だけでなく、だから周りの侍女たちも笑みを浮かべていたのだ。
「この先が楽しみですわね」
侍女が再び花束を引き受けて、食卓に置いた美しい花瓶にセットする。
「姫様、とても綺麗ですわね。食事も進みますわ」
「そ、そうね……」
そのまま円卓につかされたミリアは、口元がひきつりそうだった。
(……昨日会ったのが原因、かな?)