冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
それ以外に覚えがない。
偶然にも顔を合わせてしまったうえ、まさか誠意を示して詫びられるとは思っていなかった一件だった。
(とすると、会いに行けなかったことへのお詫びの花かな?)
顔を合わせてしまったので世間体的に贈った、というのならありそうな気がする。
だが、ミリアはなんだかそわそわしてしまった。
昨日の彼の柔らかな対応のせいだろうか。まるで〝妻への機嫌取り〟のようにも思えて落ち着かない。
(いやいやいや、結婚を白紙に持っていくつもりでいるはずだし)
アンドレアは一国の王子だ。妻を放置し続けているのはさすがに、と彼を悪く言う者たちを抑えるためにも花束を贈ったのかも――。
彼が妻だけを離宮に住まわせていることは、内外にも知れ渡っていることだ。
外を歩き回らないので、噂も分からないミリアはそう想像する。
(とりあえず、まずは食べよう)
有難くも、侍女には美容にもよすぎる美味しい朝食が並んだので、早速「いただきます」と手を合わせて口に運ぶ。
離宮で彼の部下たちがヅラをかぶって〝女性たち〟のふりをしていることは、今のところミリアは知らないことになっている。カイたちだってアンドレアに報告していない。
(ま、花くらいいっか)
いい香がするし、この国の知らない花々は綺麗で心が弾んだ。
偶然にも顔を合わせてしまったうえ、まさか誠意を示して詫びられるとは思っていなかった一件だった。
(とすると、会いに行けなかったことへのお詫びの花かな?)
顔を合わせてしまったので世間体的に贈った、というのならありそうな気がする。
だが、ミリアはなんだかそわそわしてしまった。
昨日の彼の柔らかな対応のせいだろうか。まるで〝妻への機嫌取り〟のようにも思えて落ち着かない。
(いやいやいや、結婚を白紙に持っていくつもりでいるはずだし)
アンドレアは一国の王子だ。妻を放置し続けているのはさすがに、と彼を悪く言う者たちを抑えるためにも花束を贈ったのかも――。
彼が妻だけを離宮に住まわせていることは、内外にも知れ渡っていることだ。
外を歩き回らないので、噂も分からないミリアはそう想像する。
(とりあえず、まずは食べよう)
有難くも、侍女には美容にもよすぎる美味しい朝食が並んだので、早速「いただきます」と手を合わせて口に運ぶ。
離宮で彼の部下たちがヅラをかぶって〝女性たち〟のふりをしていることは、今のところミリアは知らないことになっている。カイたちだってアンドレアに報告していない。
(ま、花くらいいっか)
いい香がするし、この国の知らない花々は綺麗で心が弾んだ。