冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ミリアはそれを聞いて納得した。後ろでカイたちが、それで納得すんのか、もっと話聞いた方がいいぞ、とか小さな声で色々と言っている。

「姫に急ぎ知らせに参りました。午後、殿下がお会いになられるようです」

「……え?」

「良かったですわね」

何もよくない。緊張で吐きそう――とミリアは思った。

そもそもなぜ会おうとしているのか、ちっとも分からなかった。



何かどうなって、こんなことになっているのだろうか。

軽く昼食を終えたのち、ミリアは第二王子の訪問を待って、侍女たちに身支度を整えられることになった。

髪は触らないでいいと言い、着替えだけを任せた。

重たいドレスと、宝石の装飾品を付けた姫衣装が重くて堅苦しい。初夜を迎えるわけでもないのに、腕にまでいい香りがする精油も着けられて緊張する。

「えと、そんなにしなくても……」

「結婚相手の、初めての訪れですのよ」

そんな風に言われると、いよいよ緊張するのでやめて欲しい。

侍女たちが退出し、待って間もなくノック音がした。

扉を開けたのは外で待機していたカイたちだ。訪れたアンドレアの左右についた彼ともう一人の騎士は、ミリアと同じく困惑しきった顔をしている。

「突然の知らせをすまない、時間が空いたので都合をつけてしまった」

「いえっ、わたくしは大丈夫ですわ」

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