冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
おほほ……と愛想笑いを返したが、うまく笑えているか自信がない。またアンドレアが食い入るように見つめてきたせいだ。

(うぅ、めちゃくちゃ緊張するっ)

瞬きの一つも逃すまいと言わんばかりだ。彼の場合、近くからまじまじと見られたら別人であると察知されないか心配だった。

「そ、それではこちらへどうぞ」

見つめられている時間を無理やり終わらせるべく、部屋の主として早速席へ案内する。

侍女なのに王子様相手に命令することに胃がぎりぎりしたが、『私は十八歳のコンスタンシア姫!』と心の中で言い聞かせた。侍女たちに入室許可をし、アンドレアの分の紅茶まで出すよう指示する。

侍女たちが用意を整えると、カイたちが退出を見届けた。彼らもそのまま一礼して外に出ていく。

(うわああああっ、一人にしないで欲しかった!)

それが作法なのは分かるけれど、一対一は不安がありすぎた。

正直言うと、このように第二王子と話す想定なんてしていなかった。何をどう話せというのだろうか。

「……え、と。それで本日のご用件は」

「夫婦になったのだ。楽に話してくれていい」

ぎこちない愛想笑いをしたミリアは、またしても固まる。

(うん……身代わりだから、それは無理だよ)

侍女であるミリアが、王族の彼と同じ立ち位置で話すなんてあり得ない。

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