冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
髪色を生活魔法で変えて『第一王女コンスタンシア』のふりをしているだけだ。バレたら、と考えると円卓の下に隠している手も足も震えそうになる。

ミリアとしては、彼の口から『夫婦』と出たのも疑問だった。

もういっぱいいっぱいで、頭の中から言葉を絞り出せない。

「君も気付いていたと思うが、向かいの本殿には女性たちがいた。彼女たちは本日付けで全て家に帰した」

「……はい?」

唐突な告白をされて、ミリアは気の抜けた声を出してしまった。

あの影が騎士たちであることは、彼女も知っていた。

あれはアンドレアが縁談逃れのため、部下たちにヅラをかぶらせて、夜にはその影を窓に映せと命じていたことだ。

帰したということにすれば、カイたちの騎士としての名誉は守られる。

しかし、そうすると〝ふりだった〟とアンドレア自身の潔白は証明できなくなる。

(……女性を置いていた、というこにしておいていいの?)

女性をはべらせて堕落した生活を送っていた、なんて汚名だろう。

自分が泥をかぶっても、部下がヅラをしていたことを言わないつもりなのだろうか。

(横暴な王子、だと思っていたんだけど……)

ミリアは、昨日から印象をことごとく覆してくるアンドレアをしげしげと見つめた。

彼がちょっと目を見開き、それから照れ隠しみたいに小さく咳払いをする。

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