冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
そういった命令は一切されていないと言う。

小隊長であるカイの話によると、様子を報告しろだという指示は引き続きない。追加で別の班や近衛騎士隊の方から護衛を寄越して置くだとか、離宮の外の警備を内側に入れるという話も聞いていないという。

(なら……疑われている線はない、のかな)

今のところ、離宮はミリアの世話時間にならないと侍女も来ない。常にいるのは、本殿に詰めた第一小隊のカイたちだけだ。

「ここって、警備がすごくゆるゆるだよね」

「それ、お前が言う?」

書類を箱に詰めている騎士がツッコミした。

「だってさ、私が知っている王宮の奥ってもっと人の目があったもん。結構緊張するところだよ」

「うちは離宮に来るまでの間に、何門か警備が敷かれてるんだけど……」

そう言われてみると、たしかにいくつかあった気がする。

ミリアは、初日に緊張しすぎてあまり見ていなかったことを思い返した。

「まっ、私にとっては都合がいいけどね。ここに来るまで、どんな緊張の日々が待っているかと思って心配してたもん」

カイたちが、ハタと互いの顔を見合った。

「なぁミリア、一つ確認したいんだけど」

ミリアは「ん?」答えて、アイスブルーの大きな目できょとんと見つめた。

「お前、今、くつろげてる?」

緊張していないんだよなと、他の騎士たちも確認してくる。

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