冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「うん。こんな風に喋れる友達もできて、私は嬉しい」

ミリアは、彼らに向かってにかっと笑って見せた。

再び顔を見合わせたカイたちが、こらえきれなかったみたいに破顔して「へへっ」と鼻をこすったり、はにかんだりした。

「俺らも一緒。なんやかんや言って、今の方が楽しいかも」

「それで? 今日は何かしたいことはあるのか?」

「そうそう。したいことがあるんなら、付き合ってやるよ」

カイも言った。書類仕事中なのに、そちらを整理している騎士たちも付き合う姿勢を示してくる。

そうだなと考えて、ふと、ミリアはアンドレアの言葉が耳に蘇った。

『この国のことを知りたいのか?』

知りたい、と言ったのは本音だった。

離れてしまうのに、そんなことを感じていいのだろうかと迷って躊躇していた。彼に問われた際に気付いたのだ。

(カイたちも言ってくれたように、いるからにはその間はこの国を楽しみたいな)

送り出した時、コンスタンシアはとても心配そうだった。

帰った時にたくさんの土産話を笑ってしたら、きっと彼女だって安心してくれると思うのだ。

何よりミリアが、不思議な神獣がいる獣人族のこの国を知りたいと思っている。

「よし、ひとまず殿下の件は気まぐれだと思うことにしよう」

「それはまた大きく出たな」

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