冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「紳士の礼儀とかが理由なんでしょ? いちおう、そういうこともする人なのかも、て思えたから」

怖い人かと思ったら、きちんと話を聞いてくれた。しかも目線を合わせてくれた。

アンドレアが大勢の女性をはべらせている噂も嘘だった。近くから見た感じだと、結婚なんて不要と考えている仕事人間に感じた。

「というわけで、私はバレないようにしつつ、引き続きこの国のことを知っていく活動をしたいと思います!」

ミリアは姫衣装を揺らして、片手を挙げただけでなく足を伸ばして主張した。

それを見たカイたちが、「ぶふっ」と噴き出す。

「素直だなー」

「バレないようにってのもハードルが高いが」

「まぁ、場所によってはなんとかなりそうだよな。付き合うよ」

ミリアは目をきらきらとさせて、早速述べる。

「それならっ、まずは離宮を出て歩こう!」

彼女の口からそんな元気いっぱいの提案が飛び出た瞬間、騎士たちは揃って「ん……?」と笑顔を固まらせた。



◇◇◇



その同時刻、珍しい人が離宮を眺められる二階通路にいた。

「ぶっくくく……」

それを見かけた宰相補佐ストレイが、塀に腕を乗せて背中を震わせているジェフリルド国王を見た。

「……陛下、何をされているのです?」

「いやぁ、元気だなと思って」

「はい?」

ストレイが生真面目な眉を寄せるが、彼は見てもこない。

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