冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「はー、ほんと可愛い。あんな可愛い娘、大歓迎」

「ああなるほど、もしや殿下の花嫁のことでございますか? 王妃様も近付けないことを怒っておられたでしょう、バレないうちにお仕事にお戻りください」

引きこもっていた姫の姿が少し見られての反応だろう。そう推測したストレイは、仕事に戻りますねと淡泊に告げてつかつかと歩き出す。

だが、ほんの少しで足を止めることになった。

支柱を挟んで向こう側にも、同じように見ている者がいたのだ。

「…………あなたもですか、アンドレア殿下」

そこにいたのは、結婚した当人の第二王子アンドレアだった。

彼は手に顔を押しつけているが、肩が震えていて、父と同じく笑っているのが分かった。

(――それもまた、珍しい)

ストレイの記憶では、彼が愉快そうにしている光景に覚えはない。

誰もが知る第二王子アンドレアは、軍人としての才能を押さない頃から開花させて注目を集めた人物だった。

たしかな剣の腕、戦闘技術の他に戦略学も圧倒的な素晴らしい指揮官だった。厳しい上官としても知られ、柔和な雰囲気の兄や父と違い冷徹に印象を強く持たれていた。

そんな彼が最近、強制結婚をして妻となった姫が離宮入りした。

結婚なぞと言い張っていた第二王子が興味津々であるとは、最近もっぱら城内外でも噂になっていた。みんなが進展を楽しみに待っている。

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