冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
四章 身代わりの花嫁と獣人王子
「髪色もオーケー、姫様セットもオーケー、どこからどう見ても姫様仕様!」
ミリアは、不備がないことを全身鏡で確認したのち、くるっと回って身体を正面に戻しえっへんと胸を張る。
どこからどう見ても、姫本人ぽくは思えない……という言葉を、部屋に迎え入れられていたカイたちは各々呟いている。
「こいつ騎士の存在に慣れすぎだろ……護衛侍女であって軍人枠ではないはずなのに、普通上着を整えるだけでも紳士を外に出すのだろうが」
「女の子が『セット』と言うものじゃないと俺は思うんだ」
「勇ましいけどさ、今回ばかりは大人しくしていて欲しい、とも思ってしまう」
騎士たちはうんうんと共感し合う。
ミリアが出した『したいことの希望』は、王宮内の探索だった。
ここにくるまで、道中の風景なんて見ている余裕はなかった。獣人族のこともよく知らないし、文化や風習も頭に入っていない。
『それで嫁入りしたとか、ほんとすごいよな』
改めて聞かされた際に、カイたちは呆れていた。
(だって、半年を過ごすことにだけ注意が向いていたんだもん)
楽しく過ごすために頭を使うことになるなんて、思ってもいなかったことだ。それもこれも、カイたちのおかげだった。
「みんながいてくれるから安心して楽しめるんだよ。ありがとう」