冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ミリアは、楽しい気持ちは彼らのおかげだと思ってお礼を言った。

笑顔を向けられた彼らが、途端にはにかむ。

「そう言われると、男としては張り切りたくなるな」

「できるだけ人が少ないところを歩いてみたいんだけど、可能かな?」

「場所はかなり限られるけど、ちゃんと考えてある。輿入れしたばかりで姫は注目されているから、大勢話しかけられる予感しかないし」

「そうしたら俺らのフォローも大変だ」

そんな騎士たちの意見も、ミリアは耳に入ってこなかった。

「話しかけられるのは無理っ。私はあくまで鑑賞用の影武者なの、うまくかわせる気がしない!」

「まぁ、うん、そう言うだろうなとは思ってたよ」

そう言ったカイと一緒に、騎士たちは遠い目をして「普段の様子を見ていれば分かるよ」と言った。

なんだか失礼なことを言われている気がしたが、理解があるからまぁいいかとミリアはと思った。

早速、ミリアは彼らを引きつれる形で王宮内を歩くことになった。

正確に言えば案内してもらっているのだが、姫の護衛、という名目でカイたちが周りを固めていてくれる。

居合わせた貴族が話しかけられにくい陣形を取ってもらっていた。はじめは緊張したものの、通路ですれ違った貴族は何事もなかったみたいにすれ違っていく。

(おぉっ、誰にも話しかけられない! これで安心して歩けるっ)

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