冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
人が少ない場所ということもあって、早々にミリアの緊張もなくなった。

王宮内は軍人や使用人用の通路も広くて、天井がかなり高いのも目を引いた。おかげで外からたっぷり光が差し込む。

支柱や扉も、金の装飾が多くて華やかだ。国の財力の高さもうかがえた。

「ほえ~」

立派なお城だなぁとミリアは思った。ぽかんと口を開けてきょろきょろしている彼女に、時々カイたちが忍び笑いして「口」と教えてくれた。



それから数日、子犬の毛づくろいとセットで、王宮内を歩くことがミリアの新しい日課となった。

姫だと美容関係でも大変だったりするが、ミリアはその習慣がない。

通常だと社交関係に追われる立場のはずだが、今のところ放置されていて、貴族同士の付き合いだってない。

おかげで彼女は時間が有り余っていた。

一番多くの時間を投入することになった子犬との触れ合いでブラッシング力も磨かれ、習得したその技術は大活躍した。

「ブラッシングは人手があればなんぼなのでっ、ぜひ!」

動物課の係の者たちとはすっかり仲良くなった。

彼らは、王宮内で育成と保護を任されている全ての神獣を担当していた。もふもふしていると癒されたし、ミリアとしては労働を提供している感があって精力的に取り組んだ。暇潰しができたようだとカイたちはちょっと安心していた。

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