冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「えっとね、毎日花を持ってきて、短い会話をするのって様子を確認しているってことでしょう? これってさ、結構まともな結婚相手のすることじゃない!?」

二拍分の間を置いて、カイたちが「はぁ?」と言った。

「だから、それが紳士の礼節だっつったろ」

「今気付いたのか? あんた、ほんと危機感なさすぎ」

冷静な彼らの反応に対して、ミリアはしゃがむと頭を抱えた。

「……全然結婚に乗り気じゃなくて、かなり無関心だったはずじゃん。やたら離宮に顔を出してくるとか想定外だし、聞いてないんですけど!? というかさ、あの人まさか追い返す気がないの!?」

うおぉおぉと全部口から出した彼女に、どうやらさっきはその混乱を口の中に押さえていたようだとカイたちも察する。

「だから、そうじゃないかって俺らは思って言ってる」

「嫌がらせのヅラかぶりも禁止されたし」

「ああ。そのうえ、お前の護衛だから命令を聞けと言われた時点で『あれ、これって?』と感じてもいた」

そんなこと、あの時ミリアはちっとも感じなかった。

(だって、おかしい。彼は結婚したくないんでしょう?)

しかも強制結婚だ。彼は花嫁が入る日の同席もボイコットし、挨拶もなく音信不通で放っていられた。

頭を抱えたまま動かなくなったミリアの沈黙を、カイたちは見守っている。

案の定彼女は自分なりに結論を出し、がばりと顔を上げた。

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