Touch me 〈White Snow 〉 合コン編
榊さんと桐谷さんは合コンそっちのけで八重樫さんとの会話を喜んでいるようだった。
私はお代わりの3種のビールを頼んで、会話を聞きながら飲みまくっていた。

「八重樫さんは海外事業部ってお忙しいんじゃないですか?」
「うん。合コンに参加できるくらいには無茶苦茶忙しいよ」
「「あははは」」
「たまには息抜きも必要だからね。それに今回は倖ちゃんにも再会できたし、無茶苦茶忙しい中、参加して良かったよ」

さらっと『会えて嬉しい』的なことを言う。
尊敬する先輩にこんなふうに言われたら、私も嬉しくなる。

「さすが元営業ナンバーワンですよね。」
「?」
「さらっと人をいい気分にさせてくれる」
「えーそう?思ってることしか言ってないよ」
「これ!桐谷君、これ覚えて帰るといいよ」

ハイとメモを取る真似をする。
「エアメモだよ。覚える気ないな」
と笑い合う。

合コンっぽい駆け引きのないノリの飲み。
席替えをしたこの空間はただの飲み会になったいた。

「倖ちゃん、ペース早くない?」
「そうですか?なんか楽しいしおいしくって」

「酔み過ぎて俺にお持ち帰りされちゃっても知らないよ?」
「八重樫さんが?」
「うん」
「あはははははは!ないない!」
「ひでえ。昔から俺が口説いても冷たいんだよ」

八重樫さんは榊さんと片桐君に訴えている。

「こんなこと言ってますけど、八重樫さんがお持ち帰りするとこ見たことないですから、倖も信じませんよ」
と榊さんは笑う。

「そうそう。それにいくら部署が代わったっていっても、世話した後輩を一晩に付き合わせるとかないですよね」
と相槌を打つと、
「倖ちゃんに一晩とか言わないよ」
「当たり前です」
「何晩でも付き合うよ」
「むしろサイテーだった」

ポンポンと軽口をたたき、笑う。
久しぶりのこの感覚。
榊さんによく飲みに連れて行ってもらったな。
懐かしい。


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