Touch me 〈White Snow 〉 合コン編
「それでいつになったら言うんですか?」
「え?」
晴久は私たちが付き合っていることを隠すつもりはないと言っていたけれど、職場では名字の「倖さん」と呼んでくれている。
これでは元彼の時と同じになってしまうと分かっているけれど、やっぱり恥ずかしい。
それに、同じ部署同士で付き合うのはなかなか周りが気にしてしまうと思うから。

「おいおいってことで」
返事を濁したところで、私から一番遠くにいる男性が声を発した。

「一人遅れるって連絡が来たから先に始めちゃおっか」
その人は男性側の幹事らしく、名前は
「広報の高松です」
だそうだ。その隣が、細いフレーム眼鏡の
「経理の葛西です」
さん。うん。なんか経理っぽい。
1席開けて、その隣が、
「営業の榊です」
「営業の片桐です」
みんな私と同じ営業部。
で、私の目の前が
「営業の前野です」
はい。先月から私の彼氏になった人です。

女性陣ににこっと柔らかい笑顔を振りまくイケメン。
女性陣、キュンってしてるよ?ちらりを女性陣の様子をうかがう。

あー。向こう側4人。胸の前で手をぎゅっと握っている。
私と隣の松本さんは営業部だからこのイケメンにきゅんとはしていないだろうと横を見る。
あ。だめだ。
胸の前で手をぎゅっと握りしめている。

「広報の桜庭です」
「秘書課の柏木です」
「秘書課の森です」
「企画の梅田です」

皆さん、美女だらけ。

メイクもばっちり。服装はみんな淡い色合い。
髪型はゆるふわだったり、つやつやのストレートだったりの違いはあれども皆さん綺麗にされている。

自分の服装に視線を落とす。

白シャツに紺のニット、黒のワイドパンツに黒いハイヒール。
仕事でいつも着ているものばかり。

「営業の松本です」
松本さんもぱっちりした目がかわいらしい子。
いつもとあまり変わらない服装だけど、ボトムはしっかりスカートをはいていた。

「営業の倖です」
せめて、化粧直しをもっと丁寧にして来ればよかった。
どうせ飲んだら化粧崩れちゃうからと適当な化粧直しをしていた1時間前の自分を叱咤してやりたい。

< 5 / 23 >

この作品をシェア

pagetop