だって君が、好きって言ってくれたから。
 日々変わらずに部員が帰っても、私は残って絵を描いていた。
 彼も変わらず、絵を黙々と描いていた。

 ただ、少しの変化があった。彼の作業を一瞬止めてしまったあの日から、たまに彼はパレットの中に微妙に違う色を何色か並べて、私に「どの色がいい?」なんて質問をしてくれるようになった。

 そして、気のせいなのかもしれないけれど、彼が花の絵を描く日が増えた気がした。

 ふたりきりで、彼の隣で絵を描くのが、当たり前になっていた。
 この空気感が好きだった。

 けれど、この時間はなくなった。
 彼は中学二年生の夏、突然転校していった。
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