だって君が、好きって言ってくれたから。
 当日。なんとなく、いつもよりも丁寧にメイクをした。彼が描いた絵に合いそうなベージュ色のワンピースも買い、普段は軽く整えて終わりな髪の毛も丁寧に編み込んだ。

 同級生の絵を鑑賞しに行くだけなのに、なんだか好きな人に会いに行くみたい。

 車で約十五分の距離に、ショッピングモールがあり、その中にある、時期によって様々なイベントが行われる場所に彼の絵は展示されている。

 館内は日曜日だからか、特に親子、カップルなどで賑わっている。

 人混みをくぐり抜け、彼の絵がある空間にたどり着いた。

『はなの絵展・神楽渉』

 パンフレットが大きく印刷され、入口に飾られていて、このふたつの言葉がぱっと目に入ってきた。

 中に入ると、すぐに彼と再会した。
 私の姿を見ると彼の両眉が勢いよく上がった。

「如月、さん?」
「うん、久しぶり」

 十年ぶりに再会した。

 彼の姿は、中学生の時の面影があった。
 雰囲気があの頃よりも明るくなった気がする。

 久しぶりに出会い、緊張感はあったものの、あの頃の空気感は、ほぼ変わらずにいた。 
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