もう嫌い! その顔、その声、その仕草。
「とは言ってもねぇ⋯⋯。私、男見る目ないみたいだし⋯⋯」

「ホント、そうだよ。こんなにイイ男が目の前にいるのに⋯⋯全然気づいてくんないし」

 いたずらっ子のような顔して腕を組みこちらを見てくる彼に、「ホントね」と笑顔で返す。

「本気でそう思ってる?」

「思ってるわよ」

「だったら⋯⋯何で俺じゃダメなの?」

「ダメって?」

「『男』としては見てくれてない⋯⋯でしょ?」

「あぁ⋯⋯それは⋯⋯」

「年下だから? ガキだと思ってる? 確かに高村さんに比べたら俺はガキかもしんない。でも、『絆利を思ってる男』としては対等だと思ってる」

「⋯⋯伊織?」

 彼は何も言わずこちらを見つめてくるだけ。あまりにもの気まずさに、私から顔を背け視線を逸らした。すると今度は彼の右手が私の頬に添えられる。自分から目を逸らすことは許さないと言わんばかりに固定された顔の位置。そのまま段々と近くなる互いの距離が、唇が重なったところで止まった。
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