【完結】秘密の子育てがバレたら、愛で包囲されました。〜その子の父親は、俺だろ?〜
「……じゃあ、五分だけですよ」
「五分でも構わない。 ありがとう」
彼は私を頭を下げると、果琳の元へと少しずつ歩み寄っていく。
私はベンチから、その様子を見ていた。
「今更……なんなの」
今更私の前に現れて、あの人は何がしたいのか分からない。
何のために、ここに来たのか。何が目的?
果琳と目線を合わせ、話をする彼の姿を見ている私は、ただそこにいることしか出来ない。
何の話をしているのかも分からないけど、果琳はあの人に向かって微笑みを向けている。
果琳が楽しそうに笑っている。あの人は一体、果琳に何を言っているのだろう。
父親だとは名乗らないと言っていたけど、本当にそうなのだろうか。 彼を信じても、いいのだろうか……。
そして五分ほど経って、彼は私の元に戻ってきた。
「子供、良い子だな。お利口さんだ、果琳は」
「……ありがとうございます」
確かに果琳は、彼との子供に間違いない。
「子供……可愛いな」
「……どうも」
果琳はもし彼が父親だと知ったら、どういう反応をするのだろう。喜ぶのかな。
「安心しろ。父親だとは名乗っていない」
「……分かってます」
果琳の家族は、私だけ。