【完結】秘密の子育てがバレたら、愛で包囲されました。〜その子の父親は、俺だろ?〜
「いいのよ!困った時はお互い様なんだから!」
中野さんは本当に優しくて、母親みたいな存在だ。
「本当にありがとうございます」
「じゃあ、気を付けてね!」
「はい。失礼します」
中野さん宅を抜けて五分ほど歩くと、私の住むアパートが見えてくる。
郵便ポストを確認してから家の中に入る。
「果琳、お昼寝する?」
「ん……」
眠そうな果琳をベッドに寝かせてから、私は服を着替える。
「はあ……疲れた」
シングルマザーとして生きていくのは、思ったよりも苦労するし、大変だ。
子供中心の生活になって、自分のことなんて後回しになる。果琳のために生きていくことが、私の母としての役目だと思っている。
果琳ななるべく寂しい思いをさせないようにしたいけど、どうしても一人だと寂しい思いをさせてしまうこともある。
そんな時、父親がいればきっと果琳は悲しまなくて済むのにって、そう思うけど。
果琳の父親の名前なんて知らないし、どこにいるのかも分からない。そんなこと願うだけムダなんだって思ってる。
シングルマザーとして生きる道を選んだのは私自身だから、そんなこと望んではいけない。
望むことすら、きっと許されない。