義母と私と
「結婚祝いです」
「え?」
義母は他の部屋で遊ぶコウとミカさんのお子さんを呼んだ。
返事の後に駆けてくるミカさんのお子さんとその後ろからミカさんに連れられてコウが来た。
「なにー?」
ミカさんのお子さんが頭を傾げながら聞くと義母はまたスッと子どもたち一人一人にポチ袋を渡してきた。
「はい、お年玉」
「やった!おばあちゃんありがとう!」
口々にお礼を言うミカさんのお子さん、そして、義母はコウも近くに呼び、手渡してくれた。
同じようにしてくれるんだと思い少しうれしく思っていると、コウが受け取ったがお礼を言えてないことに気づいた。
「コウ、ありがとうだよ」
促したが黙ったままのコウ。
元々人見知りもあるが、挨拶ですらするのが苦手な子だ。
「ほら!」と、無理に頭を下げさせようとしたら義母が止めた。
「これから、ゆっくり仲良くなりましょう」
その言葉にゾクッとした。
嫌みなのか、本心なのか、わからなくて怖い。
そんなこと考えてるなんて思いもしないのだろう。
次にミカさんと私にポチ袋を渡してきた。
ミカさんは軽く「毎年ありがとー」と言っているので恒例なんだろうけど、何なのかわからない。
「ありがとう、ございます」
義母はそれからなにも言わなかった。
2時間ほど無言が続き、気まずい思いをしていたらミカさんが帰宅するというのを聞き、タツヤが便乗したので帰宅することができた。
家に帰ってからタツヤに結婚祝いとポチ袋の件を言うと軽く「よかったなー」くらいですまされそうになり引き留めた。
「いや、そうじゃなくて、何で今さら?それにこのポチ袋も!」
「え、普通にお祝いでしょ?結婚したんだし。今さらって言うけどあれから会う機会なかったじゃん。ポチ袋は姉さんもだけど、俺ももらってるよ、いくつになっても可愛い子どもだからって」
ぐっと言いたいことが全部喉でとまった。
なんで、わけがわからない。
「私は、あの人の子じゃない…」
これだけ、こぼれ落ちた。
その言葉にタツヤがムッとしたのが分かった。
「お前もそのくらい大事だってことだよ」
「でも…」
「そうやって、母さんの良心を疑うのやめてくれよ」
そう言ってタツヤはコウのもとに言って遊び始めた。
ポロポロ涙が出る。
なんで、こうなるのよ。
正月から、こんな話したくない。
「もう!」
コウの目につかないように台所のすみに行き、息を殺して泣いた。