Les Paul

1弦:春

春の日差しで目が覚める。

昨日は入学式で学校は半日しかなかったのに慣れない環境に新生活への緊張でどっと疲れた。

今日はオリエンテーションって言ってたっけ。

部活動紹介もあるはずだ。

私の通う星空学園は私立の高校で、学校目標として文武両道を掲げている。

だから、部活動には必ず入部しないといけないんだって。

中学生のころは帰宅部だったから初めての部活がとっても楽しみだ。

ルンルンした気持ちでまだ固い制服に腕を通した。


「湊(ミナト)、おはよう」


「環奈(カンナ)!おはよ!」

玄関を開けると美少女が。

美少女の名前は守谷 環奈(モリヤ カンナ)。

あの有名な何千年に一人の逸材の可愛い女優さんにそっくりな可愛い可愛い女の子。

何千年に一人の逸材が女優さんも含めて二人も存在してる今ってすごいことだよ。


「どんな時代に生まれてきてしまったんだほんとに」


「何?なんか言った?」


「なんでもない!
そんなことよりも昨日のドラマさ、」


環奈とは中学の頃から仲良くて毎日一緒に登下校してる。

中学生の頃は学校の近くの神社で暗くなるまで毎日喋って帰ってた。

どれだけ一緒にいても飽きない。大切な友達だ。

そんな環奈と話しながら電車も合わせて40分の道のりを進む。

環奈とだったら10分くらいに感じるけどね。

学校に着いて席に着く。


「おはよ、佐野。」


「おお!おはよ!赤城(アカギ)君!」


隣の席の赤城 優(ユウ)。

いわゆる犬顔のイケメン。

イケメンなのにとってもフレンドリーで八重歯がちらっと見える笑顔に親しみを持てる。

話しやすくてすぐに仲良くなった。


「部活決めた?」


「いや、まだなの。
今日の部活動紹介見て決めようと思って
赤城君は?」


「俺はもちろんサッカー部。」


「あ~、納得。すごい似合うと思う。」


「だろ?」


また八重歯がキラッと光る。

この笑顔で恋に落ちてしまった女の子は何人いるのだろうか。

昨日もその話をしたら「いや、俺いつも友達止まりなんよね」と言われた。

友達止まり。確かにフレンドリーな性格のおかげで友達の印象が強いかもしれない。

まあそんなことはどうでもいいんだけどね。


「おはようございます~。席ついて~。」


担任の熊田(クマダ)先生が入ってきた。

間延びした挨拶にゆるっとした喋り方。

体型も名前も合わさって二日目にしてくま先生というあだ名がついた。


「今日は~、各授業の担当の先生が~、それぞれ必要なものとか色々伝えに来てくださるので~、しっかりメモ取って~、明日からの授業に備えてね~。」


「それじゃあ~、僕の担当の~、物理から~、、、」




「っはぁぁ、、。疲れた、、。」


「こんなので疲れてたら明日からの授業持たないよ」


環奈がくすくす笑う。

やっっと全教科のオリエンテーションが終わった。

私はグッと腕を上にあげ、ぐぐっと伸びをした。


「座学は嫌いだ~、、。」


「じゃあ、午後からは楽しめるね」


「そりゃあもう!!」


午後は、校内探検をして待ちに待った部活動紹介。

わくわくが溢れ出して止まらない私を見て環奈はまた笑った。




そんなこんなで私たちは今体育館にきれいに並べられた椅子に座っている。

周りには私たちと同じ1年生らしき人たちが座っている。

同級生のはずなのに私よりもみんな年上に見える。

環奈が大人っぽいと思ってたけど、私が子どもっぽいのか?

綺麗に髪を巻いていたり、さらっさらのストレート、うっすらとばれないくらいの化粧を施した綺麗な顔。

JKってすごいんだなあ、。


そんなことを考えていると体育館の明かりが消え、スポットライトが一点を照らした。


「1年生の皆さ~ん!!こんにちは~!!!!」


「「「こんにちは~!!」」」


「元気な挨拶ですね~!」


「お待ちかねの部活動紹介が始まりますよ~!
準備はいいですか~!!」


「司会は生徒会執行部、河合(カワイ)と田中(タナカ)が務めさせていただきます!」


「盛り上がっていきましょう~!!!」


すごい!すごいすごいすごい!

ずんずんとお腹に響く大きな音とともに生徒会執行部の先輩二人が出てきてから楽しいが止まらない。

次々と色々な部活の先輩たちが楽しい出し物を行いながら部活動を紹介していく。

どの部活のどの先輩たちもキラキラしてて楽しそうだった。


「剣道部の皆さん、ありがとうございました~!!」


「さて!!次は軽音楽部の紹介に移っていきたいと思います!」


「準備ができたようなので、始めて行きましょう。」


司会の先輩が手を挙げた瞬間、場を盛り上げていた大きなBGMが止まる。

急に静かになった体育館で真っ暗なステージ上に全員の注目が集まる。


カンカンカン


何かがリズムを取った次の瞬間。

爆音が体育館に響き渡った。

最近色々なところで聞く、有名なロックバンドの曲が先輩たちによって奏でられていく。

プロ顔負けの歌唱力に安定した分厚い音。

ギターを持った先輩が前に出てソロを披露する。

目が離せない。

何一つ聞き逃したくなくて耳の全神経を全力で音楽に集中させる。


「今日、放課後部室で新入生歓迎ライブを行います。みんなで盛り上がりましょう!お待ちしてます!」


退場していく先輩たちを見送りながら物足りなさを感じる。

環奈誘ってみよう。ライブ、行くしかない。


「軽音楽部の皆さん、ありがとうございました。
いや~、盛り上がりましたね。」


「以上で部活動紹介は終了になります。
入りたい部活は決まりましたか?」


「魅力的な部活動がたくさんあったと思います!
先輩たちは皆さんの入部を心待ちにしています!」


「一緒に楽しい学生生活を送りましょう~!!」


体育館の明かりが点いてぞろぞろと帰路に就く。

今日はこのまま流れ解散だ。


「湊!決まった?」


「環奈!軽音!ライブ行こ!
私軽音部がいい!!」


「軽音か~、私野球部のマネージャーしようと思って」


「何それ、似合いすぎてる。めっちゃいい。」


野球部のマネージャーなんてモテてしまうに違いない。

環奈がマネージャーをしている姿は容易に想像できる。

ドラマのワンシーンのようだ。


「一人で行くの緊張するからさ、、1回だけ!
今日だけ一緒に来て!お願い!」


「しょうがないなあ、megami coffee の新作奢りね」


「ありがとう~!!!」
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