推し活!
話題はコンサートチケットの方へと移った。


「慈雨は二公演当選って言ってたよね。東京の昼と……」


「仙台の昼。萌香は東京の夜公演だけだっけ?」


「そうそう。慈雨と同じ四公演申し込んだんだけど、一勝三敗」


慈雨も萌香もそれぞれの公演にチケット二枚ずつ申し込んでいる。


どちらか一方だけ当選しても、一緒に行けるようにしているのだ。


今回は運良くカブリなしだ。



「だと、仙台の昼と東京の昼夜か……」


萌香は風貌とは似つかわしくない真面目な顔でつぶやいた。


慈雨も「んー」と腕を組んで思案する。


恐らく慈雨と萌香はおなじことを考えている。


「東京の夜公演は厳しいかな」と慈雨が言うと、「うんうん」と萌香がこたえた。


二人が住んでいるのは南東北のとある県。


チケットを申し込んでおいてなんだが、コンサートのグッズを買ったり、他の推し活をすることを考えると、高校生の財力では東京日帰りが限界だ。


加えて、慈雨の家は両親が厳しく、夜行バスの利用なども難しいという事情があった。
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