推し活!

第3節

慈雨は7組、萌香は3組だった。


慈雨は重い足取りで新しいクラスへと向かう。


友達になれそうな人がいるといいんだけど……


内気な慈雨にとって、クラス替えはかなりの試練だ。


教室の後方の入口からそっと中に足を踏み入れた。


1年生の時に同じクラスだった子の顔もチラホラあるが、あまり話したことがない人ばかりだ。


萌香みたいな派手な風貌をした子もいれば、メガネをかけた真面目そうな子もいる。


慈雨はこっそりと観察しつつ、極力気配を消して、窓際の自分の席へ着席した。


とりあえず新学期に提出する書類とペンケースを机の上に出す。


その時だった。


「あれ?もしかしてAOのファン?」


突然声を掛けられた。


派手な風貌の子だなぁと思って見ていた子が、慈雨の前に立っていた。


しまった、と慈雨は思い、とっさにペンケースを両手で隠して顔を伏せた。


プラスチックのペンケースのフタにAOのステッカーを貼っていた。


といっても、本人の写真は入っていない文字だけのステッカー。


しかも『AO』の文字はなく、昨年のコンサートのタイトルが書いてあるだけ。



ぱっと見ではAOのファンだとバレないと思っていたのに……


「ねっ?そうでしょ?昨年のコンサート会場限定で売ってたステッカーだよね?ねぇ、そうでしょ?」


慈雨が警戒していることに気付かないのか、派手な子はしつこく話しかけてくる。


会場限定って知ってるってことは、この子もファン??


慈雨は恐る恐る顔を上げた。
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