推し活!
「あの……」


慈雨は勇気を出して続ける。


「私の友達もAOのファンで、今日の放課後、推し活する約束なんだけど……綺羅ちゃんも一緒にどう?」


「その友達はどっち?」


「えっ?」


「尚?真広?」


綺羅は食い気味にきいてくる。


「……尚くんだけど……」


慈雨は嫌な予感がして、おずおずと答えた。


「じゃあいいや。私、パス」


綺羅は眉間にシワを寄せて、吐き捨てる。


慈雨はドキッとした。


もしかして……怒らせちゃった?


やっぱりね、と慈雨は思った。


同担拒否(どうたんきょひ)』だ。


そのアイドルのことを好き過ぎて、その人を好きな他のファンがライバルに見えて仲良くできない。


綺羅はそういうタイプのファンなのだ。


慈雨も真広のことを本気で好きだから、綺羅の気持ちもわからないでもない。


けど……


せっかくAOのファンつながりなのだから、萌香もまざって三人で仲良くしたかった。


私とは仲良くしてくれるんだよね?


いや、そもそも萌香と仲良くできない子と、私は仲良くなりたいか……?


でも、新しいクラスに友達がいないのも辛いし……




「そうだ!」と何食わぬ顔で続ける綺羅。


「慈雨にいいこと教えてあげる。尚の……」


その時、ちょうど先生が現れた。


「んじゃあ、また今度」と綺羅が踵を返す。


尚くんの、なんだろう?


綺羅の存在が一筋の光に思えた。


のに。


一転して不安になってしまった。
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