推し活!
「ピーッ、ナビダイヤルでお繋ぎします」


慈雨は丸まっていた背中をすっと伸ばした。ようやく電話が繋がったのだ。


「会員番号を入力して下さい」


慈雨は機械的な声に指示された通りに、ファンクラブの会員番号に指をすべらせた。


「確認する公演コードを入力して下さい」


今度は机に置いていたメモ用紙を拾い上げる。そこには全部で4つの公演コードが記されている。


今回予定されているコンサートツアーは全国7都市を回るもので、慈雨はそのうち2ヶ所の昼公演、夜公演に申し込んでいた。


1つ目のコードを入力した。


「落選、です」


感情のない無機質な声が響いた。気の遠のきかけた慈雨だが、まだ次があると思い直して、2つ目のコードを入力する。


「当選、です」やった!


次。
「落選、です」


次。
「当選、です」


2勝2敗か。ここ数年の結果と比べると、悪くない。


全敗で涙をのんだ年もあったのだから。




「お姉ちゃーん、テレビ始まるよー」


リビングから声を掛けられ、慈雨はもう一度時計を見た。8時だ。


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