秋恋 〜愛し君へ〜
全てのセクション見学は終了した。
第一希望「フォレスト」そう書いて提出した。
配属の日がやってきた。俺を含め、男女7人がフォレストに配属された。サブマネに連れられ事務所へ向かった。
もともと好き好んで第一希望に持ってくる奴なんている筈がないなんて思っていたが、意外にそうでもなかった。フォレストにはレストラン部ナンバーワンと言われている人物がいる。入社9年目の笠原真也さんだ。彼も高卒、異例の速さでキャプテンまで昇ってきた。高校時代にはメンズファッション誌のモデルもやっていたという。既婚者で2歳になる息子もいるが、女子社員の人気は絶大だ。今回配属された女ども5人も笠原さん目当てに希望したらしい。
「なんでお前がここにいるんだよ」
「なんで?って俺が聞きたいねん」
「お前、ベル希望じゃなかったのかよ」
「せやぁ、女にモテるっちゅーたら、やっぱベルるやん」
「その考え、お前らしいな」
勇次は予想外の展開に相当落ち込んでいる様子だった。必ずしも希望が通るわけでは無いのだ。
「いいじゃねーか。お前言ってただろう、彼女がおるところがええわぁって」
「言うた言うた。せやけどフォレストやでぇ…ん?それよか、なんでお前もここにおんねん!」
「お、俺?」
「せやぁ」
勇次は横目で俺を見ると、ニヤッとし、勝ち誇った顔で囁くように言った。
「彼女に惚れよったな」
返す言葉が見つからない。
「図星やろ」
「…」
俺はあえて否定はしなかった。
「がんばるんやでぇ」
勇次は俺の肩に自分の肩を軽くぶつけ、再度ニヤッとした。
事務所のドアが開き「おはようございます」と誰かが出勤してきた。振り返ると黒服の上着を左肩にかけた男性と、上着を右腕にかけた彼女だった。
「新入社員か、よろしく」
ちょっと低めの渋い声イイ男だ。
「彼はキャプテンの笠原さんです。同じくキャプテンの岩切樹です。よろしくお願いします」
相変わらずやわらかい声だ。
〜 イワキリ・イツキ 〜
俺は心の中で繰り返した。
彼女は勇次の顔を見ると
「日高くん、この前は本当にごめんなさいね」
そして俺にも
「長谷川くん、荷物を拾ってくれてありがとう」
「とんでもないです!」
俺はすかさずそう言った。
どうして俺たちの名前を知っているのだろうそう思ったが、名前を知っていてくれていたということに俺は心の底から感動してしまった。冷静になって考えてみれば、胸に名札をしていれば誰にでもわかることなのに。
長谷川くん彼女の声はいつまでも俺の心に座っていた。
第一希望「フォレスト」そう書いて提出した。
配属の日がやってきた。俺を含め、男女7人がフォレストに配属された。サブマネに連れられ事務所へ向かった。
もともと好き好んで第一希望に持ってくる奴なんている筈がないなんて思っていたが、意外にそうでもなかった。フォレストにはレストラン部ナンバーワンと言われている人物がいる。入社9年目の笠原真也さんだ。彼も高卒、異例の速さでキャプテンまで昇ってきた。高校時代にはメンズファッション誌のモデルもやっていたという。既婚者で2歳になる息子もいるが、女子社員の人気は絶大だ。今回配属された女ども5人も笠原さん目当てに希望したらしい。
「なんでお前がここにいるんだよ」
「なんで?って俺が聞きたいねん」
「お前、ベル希望じゃなかったのかよ」
「せやぁ、女にモテるっちゅーたら、やっぱベルるやん」
「その考え、お前らしいな」
勇次は予想外の展開に相当落ち込んでいる様子だった。必ずしも希望が通るわけでは無いのだ。
「いいじゃねーか。お前言ってただろう、彼女がおるところがええわぁって」
「言うた言うた。せやけどフォレストやでぇ…ん?それよか、なんでお前もここにおんねん!」
「お、俺?」
「せやぁ」
勇次は横目で俺を見ると、ニヤッとし、勝ち誇った顔で囁くように言った。
「彼女に惚れよったな」
返す言葉が見つからない。
「図星やろ」
「…」
俺はあえて否定はしなかった。
「がんばるんやでぇ」
勇次は俺の肩に自分の肩を軽くぶつけ、再度ニヤッとした。
事務所のドアが開き「おはようございます」と誰かが出勤してきた。振り返ると黒服の上着を左肩にかけた男性と、上着を右腕にかけた彼女だった。
「新入社員か、よろしく」
ちょっと低めの渋い声イイ男だ。
「彼はキャプテンの笠原さんです。同じくキャプテンの岩切樹です。よろしくお願いします」
相変わらずやわらかい声だ。
〜 イワキリ・イツキ 〜
俺は心の中で繰り返した。
彼女は勇次の顔を見ると
「日高くん、この前は本当にごめんなさいね」
そして俺にも
「長谷川くん、荷物を拾ってくれてありがとう」
「とんでもないです!」
俺はすかさずそう言った。
どうして俺たちの名前を知っているのだろうそう思ったが、名前を知っていてくれていたということに俺は心の底から感動してしまった。冷静になって考えてみれば、胸に名札をしていれば誰にでもわかることなのに。
長谷川くん彼女の声はいつまでも俺の心に座っていた。