秋恋 〜愛し君へ〜
「俺、樹さんのこと、ずっと思ってました。勇次とぶつかったあの日からずーっと。樹さんの黒服姿を見たとき、同じポジションでいろんなものを見てみたい。そう思ってフォレストに希望を出したんです。あなたには半端な男だって思われたくなくてここまでやってきた。それこそ必死で。樹さん俺じゃだめですか?傍にいるのが俺じゃ頼りないですか?」
彼女は少し戸惑っているようだった。
「……ありがとう。でも、あなたの気持ちを受け入れることはできないわ。彼を断ち切るために、あなたを利用するような事はしちゃいけないと思うから。長谷川くん、あなたはとっても素敵な人よ。だから、あなたには頼れない。頼る資格なんてないの」
俺は、自分自身を抑えることができなくなっていた。
「資格ってなんだよ!わけわかんねーよ!そんな中途半端な理由で、はいそうですか。なんて言えるわけないだろ!振るんだったら必要ないってはっきり言ってくれよ!」
「長谷川くん…」
彼女は聞こえるか聞こえないかくらいの声でつぶやいた。俺は大きく息を吸い吐き出した。自分自身を落ち着かせるための深呼吸だった。
「大きな声出してすみません…俺の中で、樹さんはいつも笑ってるんです。だからあなたが辛いとき、悲しいとき、俺が支えになれたら、あなたの笑顔を守れたらどんなにいいだろうってそう思ってました」
彼女の瞳を覆っていた涙の膜は破れ、透き通った滴はゆっくりと頬をつ伝っていった。俺は彼女を引き寄せ抱きしめた。そうせずにはいられなかったから。もう一度、彼女の気持ちを確かめるように強く強く抱きしめた。でも、答えは同じだった。彼女の背中に回した俺の腕は、彼女自身の意思によって外された。首を左右に振るおまけ付きだった。
「分りました。俺帰ります。今日はご馳走様でしたホント美味かった」
俺は泣きたいはずなのに、なぜか笑ってそう言った。それは多分、この数時間で天国と地獄を味わって、いろんな感情が一気に押し寄せてきたせいで、きっと俺の心は再起不能に陥ってしまっていたからなのだと思う。
俺はそのまま彼女の顔を見ることなく、玄関の扉を開け、冷たい夜の空気に身を投げ入れた。壁にもたれかかり大きくため息をついた。
「終わった」
そう呟いた瞬間、俺は虚無感に支配された。体が重い。階段は下りなのに。そういえば、こんな思いは二度目だ。階段をやっと降りきってしばらく歩いたが、足を踏み出す気力もなくなり、駅まであと数メートルというところで立ち止まってしまった。
彼女は少し戸惑っているようだった。
「……ありがとう。でも、あなたの気持ちを受け入れることはできないわ。彼を断ち切るために、あなたを利用するような事はしちゃいけないと思うから。長谷川くん、あなたはとっても素敵な人よ。だから、あなたには頼れない。頼る資格なんてないの」
俺は、自分自身を抑えることができなくなっていた。
「資格ってなんだよ!わけわかんねーよ!そんな中途半端な理由で、はいそうですか。なんて言えるわけないだろ!振るんだったら必要ないってはっきり言ってくれよ!」
「長谷川くん…」
彼女は聞こえるか聞こえないかくらいの声でつぶやいた。俺は大きく息を吸い吐き出した。自分自身を落ち着かせるための深呼吸だった。
「大きな声出してすみません…俺の中で、樹さんはいつも笑ってるんです。だからあなたが辛いとき、悲しいとき、俺が支えになれたら、あなたの笑顔を守れたらどんなにいいだろうってそう思ってました」
彼女の瞳を覆っていた涙の膜は破れ、透き通った滴はゆっくりと頬をつ伝っていった。俺は彼女を引き寄せ抱きしめた。そうせずにはいられなかったから。もう一度、彼女の気持ちを確かめるように強く強く抱きしめた。でも、答えは同じだった。彼女の背中に回した俺の腕は、彼女自身の意思によって外された。首を左右に振るおまけ付きだった。
「分りました。俺帰ります。今日はご馳走様でしたホント美味かった」
俺は泣きたいはずなのに、なぜか笑ってそう言った。それは多分、この数時間で天国と地獄を味わって、いろんな感情が一気に押し寄せてきたせいで、きっと俺の心は再起不能に陥ってしまっていたからなのだと思う。
俺はそのまま彼女の顔を見ることなく、玄関の扉を開け、冷たい夜の空気に身を投げ入れた。壁にもたれかかり大きくため息をついた。
「終わった」
そう呟いた瞬間、俺は虚無感に支配された。体が重い。階段は下りなのに。そういえば、こんな思いは二度目だ。階段をやっと降りきってしばらく歩いたが、足を踏み出す気力もなくなり、駅まであと数メートルというところで立ち止まってしまった。