秋恋 〜愛し君へ〜
樹にはすぐに海外研修のことを話した。姉貴の特訓を受けるため、しばらく実家に戻ることも付け加えた。もちろん応援してくれた。
そして特訓は始まった。机に向かい参考書と睨み合い。もちろんそれもあった。でもそれは、意味のわからない単語を調べる時に辞書を使う程度で、あとはちょっと違っていた。
毎朝姉貴が読んでいる英字新聞を必ず手渡され、音読するように言われた。普通の新聞でさえ読むのがおっくうなのに、英文だらけの新聞は吐き気を催すほど辛いものだった。
それから時間の許す限り、姉貴と姉貴の会社の人たち(ほとんど外人)や友人(やっぱり外人)との食事や飲み会にも付き合った。
足を運ぶ店は全て外国人が経営していた。日本語は使わない。それには勇次も同行した。その席での会話に英字新聞についてのことが必ず出てくる。そして俺たちに決まって質問してくるのだ。姉貴は助けるどころか、むしろここぞとばかりに流暢な英語で攻めてくる。
みんなと食事をしながら、飲みながら、いろんな話をした。趣味のこと、母国に残してきた恋人のこと、家族のこと。何とか自然に会話できるようになっていた。
テスト前日の最後の食事会で、姉貴の同僚で友人でもあるジュリアンが俺にそっと教えてくれた。
姉貴は俺と勇次のスケジュールに合わせてこれらの食事会を計画した。費用は全て自分が持つからとみんなに声をかけた。どうしてそこまでするのか訊ねると
『It's splendid to spend money on
wonderful men!』
そう笑って答えたそうだ。
『イイ男にお金を使うって最高よ!』
俺はずっと姉貴に蔑まれていると思っていた。
何をやっても中途半端で、何に対しても反抗的な態度ばかりとっていた俺を絶対馬鹿にしている。だから、今回も俺が800点なんて取れるはずがない。そう腹の底で笑っていて英字新聞をあてがい、飯にも適当に付き合わせているだけなんじゃないか。ちょっとだけ疑っていた。
俺はこんな自分自身に本当に呆れてしまった。一体いつになったら大人になれるのか…
TOEICはリスニングとリーディングが行われる。会話で耳を、英字新聞で目を、これが勉強嫌いな俺たちに対しての姉貴流の特訓だったのだ。
そして特訓は始まった。机に向かい参考書と睨み合い。もちろんそれもあった。でもそれは、意味のわからない単語を調べる時に辞書を使う程度で、あとはちょっと違っていた。
毎朝姉貴が読んでいる英字新聞を必ず手渡され、音読するように言われた。普通の新聞でさえ読むのがおっくうなのに、英文だらけの新聞は吐き気を催すほど辛いものだった。
それから時間の許す限り、姉貴と姉貴の会社の人たち(ほとんど外人)や友人(やっぱり外人)との食事や飲み会にも付き合った。
足を運ぶ店は全て外国人が経営していた。日本語は使わない。それには勇次も同行した。その席での会話に英字新聞についてのことが必ず出てくる。そして俺たちに決まって質問してくるのだ。姉貴は助けるどころか、むしろここぞとばかりに流暢な英語で攻めてくる。
みんなと食事をしながら、飲みながら、いろんな話をした。趣味のこと、母国に残してきた恋人のこと、家族のこと。何とか自然に会話できるようになっていた。
テスト前日の最後の食事会で、姉貴の同僚で友人でもあるジュリアンが俺にそっと教えてくれた。
姉貴は俺と勇次のスケジュールに合わせてこれらの食事会を計画した。費用は全て自分が持つからとみんなに声をかけた。どうしてそこまでするのか訊ねると
『It's splendid to spend money on
wonderful men!』
そう笑って答えたそうだ。
『イイ男にお金を使うって最高よ!』
俺はずっと姉貴に蔑まれていると思っていた。
何をやっても中途半端で、何に対しても反抗的な態度ばかりとっていた俺を絶対馬鹿にしている。だから、今回も俺が800点なんて取れるはずがない。そう腹の底で笑っていて英字新聞をあてがい、飯にも適当に付き合わせているだけなんじゃないか。ちょっとだけ疑っていた。
俺はこんな自分自身に本当に呆れてしまった。一体いつになったら大人になれるのか…
TOEICはリスニングとリーディングが行われる。会話で耳を、英字新聞で目を、これが勉強嫌いな俺たちに対しての姉貴流の特訓だったのだ。