秋恋 〜愛し君へ〜
地下1階にある従食(従業員食堂)の入り口には、ホワイトボードに本日のメニューが書いてある。その日は白身魚のフライだった。俺は魚全般大っ嫌いで「ゲッ!」と口走ってしまった。勇次はニヤリと薄笑い「カレーにしいやぁオ・コ・チャ・マ」と耳元でささやいた。

「長谷川くん、魚嫌いなの?ダメだよ好き嫌いしちゃ。研修の時全然気づかなかった」

「そりゃ気づけへんのは当たり前や」

「あっ、そうか、バイキングだった」

「そういうこっちゃ」

「でも本当に魚食べなきゃダメだよ」

「せやぁ、野添の言う通りや。なんでも食べんと大きくならへんでぇ」

「うるせぇよ」

「もう十分大きいよね」

「こいつ、オコチャマのくせに背ばっか伸びよんねん」

こんなことを言われてもつい許してしまうのは、クリクリお眼々の勇次ちゃんだからだ。
あの研修以来、なぜか野添は俺たちにくっついている。名紫野はというと、俺たちのグループから他のグループに移動していた。どうせ上に口を聞いてもらったのだろう。
どうやらVIPの孫らしいからな。
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