秋恋 〜愛し君へ〜
10月21日
久しぶりのオフだ。
俺は河川敷まで歩いている。
チノパンのポケットに突っ込んでいた携帯が鳴た。
「もしもし」
「秋おじさん、胡桃(くるみ)だけど、もう、お父さんどうにかして!」
「勇次がどうかしたのか?」
「胡桃のスーツケースと籠城してるの」
「籠城?」
「うん、昨日帰って来てからずーっと寝室に閉じこもってる。俺は留学なんか許した覚えはあらへんでぇ!だって。ふざけてるよね!」
「今更?」
「そう、今更」
「お前の顔見たら寂しくなったんじゃないのか?可愛い可愛い一人娘だからな」
電話口の向こうから日高家のやりとりが聞こえる
《勇ちゃん、いつまでそうしてるつもり?ここ開けてくれないと私着替えらんないでしょ!》
《知らん》
《何が知らんよ!》
「胡桃、姉貴に代わってくれるか?」
「うん」
「もしもし」
「大変だな」
「すぐ出てくると思ってたんだけど、出てこないわ」
「あのさぁ、最終兵器使えば?」
「最終兵器?えーっ、使っちゃう?」
「ここで使わなくてどうする」
「そうだね。胡桃、はい、電話」
「何何?最終兵器って何?」
「すぐにわかるよ」
《勇ちゃん、あのさぁ、もう単身赴任終わりにしようか。私も大阪に住もうかなぁ》
《………》
《勇ちゃん聞いてる?》
「あ、ドアが開いた」
《ホンマ?》
《ホンマ》
《ホンマにホンマ?》
《ホンマにホンマ》
《夏ぅーーーーーっ!》
《痛っ!痛タタタタタタ》
「わわわわわわ、抱きついてるし」
「最終兵器の威力はすげぇだろ」
「うん、凄いわ」
《あのぉ〜、お取込み中申し訳ないんですが、スーツケース返してもらえませんかね》
《なんや、胡桃、おったんかいな》
《はっ?》
《スーツケースやな、ほれ、気ぃつけて行きやぁ》
《な、なんなの!!!》
「一件落着だな」
「なんだかなぁ…」
「胡桃、気をつけて行くんだぞ。ブラウン夫妻に思いきり甘えて来い」
「うん、わかった」
「俺も来月出張でそっち行くから」
「え⁉︎ホント⁉︎やったぁ!胡桃よりきっとブラウン夫妻の方が喜ぶよね。秋おじさんのこと、溺愛してるから」
「溺愛?」
「うん。高校生の頃さ、初めてブラウン家に連れてってもらったじゃん、その時胡桃見たもん」
「何を?」
「ブラウンおばあちゃんの部屋に入ったことあるんだけど、秋おじさんの写真がめっちゃ飾ってあった。ホント凄い数!」
「マジか…」
「うん、凄かったよ。一番好きな写真はどれか訊いたらね……」
「訊いたら?」
「結婚式の写真だって言ってた。秋おじさんと樹おばさんが笑って見つめ合ってるやつ。秋おじさんの家にも飾ってあるでしょ、二人で写ってるやつ」
「あの写真か」
「うん、秋おじさんめっちゃカッコイイし、樹おばさんもめっちゃ綺麗。あの写真見てるとね、凄く幸せな気持ちになるんだって言ってたよ」
「そうか」
「秋おじさん、絶対来てよ。約束だからね」
「わかったよ。あ、胡桃」
「何?」
「二十歳、おめでとう」
「ありがとう。秋おじさんも、お誕生日おめでとう」
「ありがとな」
会話が終わるのと同時に、お気に入りの場所に到着した。
久しぶりのオフだ。
俺は河川敷まで歩いている。
チノパンのポケットに突っ込んでいた携帯が鳴た。
「もしもし」
「秋おじさん、胡桃(くるみ)だけど、もう、お父さんどうにかして!」
「勇次がどうかしたのか?」
「胡桃のスーツケースと籠城してるの」
「籠城?」
「うん、昨日帰って来てからずーっと寝室に閉じこもってる。俺は留学なんか許した覚えはあらへんでぇ!だって。ふざけてるよね!」
「今更?」
「そう、今更」
「お前の顔見たら寂しくなったんじゃないのか?可愛い可愛い一人娘だからな」
電話口の向こうから日高家のやりとりが聞こえる
《勇ちゃん、いつまでそうしてるつもり?ここ開けてくれないと私着替えらんないでしょ!》
《知らん》
《何が知らんよ!》
「胡桃、姉貴に代わってくれるか?」
「うん」
「もしもし」
「大変だな」
「すぐ出てくると思ってたんだけど、出てこないわ」
「あのさぁ、最終兵器使えば?」
「最終兵器?えーっ、使っちゃう?」
「ここで使わなくてどうする」
「そうだね。胡桃、はい、電話」
「何何?最終兵器って何?」
「すぐにわかるよ」
《勇ちゃん、あのさぁ、もう単身赴任終わりにしようか。私も大阪に住もうかなぁ》
《………》
《勇ちゃん聞いてる?》
「あ、ドアが開いた」
《ホンマ?》
《ホンマ》
《ホンマにホンマ?》
《ホンマにホンマ》
《夏ぅーーーーーっ!》
《痛っ!痛タタタタタタ》
「わわわわわわ、抱きついてるし」
「最終兵器の威力はすげぇだろ」
「うん、凄いわ」
《あのぉ〜、お取込み中申し訳ないんですが、スーツケース返してもらえませんかね》
《なんや、胡桃、おったんかいな》
《はっ?》
《スーツケースやな、ほれ、気ぃつけて行きやぁ》
《な、なんなの!!!》
「一件落着だな」
「なんだかなぁ…」
「胡桃、気をつけて行くんだぞ。ブラウン夫妻に思いきり甘えて来い」
「うん、わかった」
「俺も来月出張でそっち行くから」
「え⁉︎ホント⁉︎やったぁ!胡桃よりきっとブラウン夫妻の方が喜ぶよね。秋おじさんのこと、溺愛してるから」
「溺愛?」
「うん。高校生の頃さ、初めてブラウン家に連れてってもらったじゃん、その時胡桃見たもん」
「何を?」
「ブラウンおばあちゃんの部屋に入ったことあるんだけど、秋おじさんの写真がめっちゃ飾ってあった。ホント凄い数!」
「マジか…」
「うん、凄かったよ。一番好きな写真はどれか訊いたらね……」
「訊いたら?」
「結婚式の写真だって言ってた。秋おじさんと樹おばさんが笑って見つめ合ってるやつ。秋おじさんの家にも飾ってあるでしょ、二人で写ってるやつ」
「あの写真か」
「うん、秋おじさんめっちゃカッコイイし、樹おばさんもめっちゃ綺麗。あの写真見てるとね、凄く幸せな気持ちになるんだって言ってたよ」
「そうか」
「秋おじさん、絶対来てよ。約束だからね」
「わかったよ。あ、胡桃」
「何?」
「二十歳、おめでとう」
「ありがとう。秋おじさんも、お誕生日おめでとう」
「ありがとな」
会話が終わるのと同時に、お気に入りの場所に到着した。