もし君の世界から僕だけが消えても。
第2章
浮上
カナヅチという言葉の意味を知ったのはいつ頃だったのだろう。
僕は多分、それを知るより前に泳げないことを自覚していた。
バタフライや背泳ぎなんて以ての外で、クロールさえ15mが限界。
そんな僕は今─溺れている。
水面って日に照らされたら白っぽく見えるんだな。
なんて、このタイミングでそんなことを考えた。
自分の口からボコボコと気泡が水面に近づいていって、反対に僕の身体は海底へと引っ張られる。
「あぁ、死ぬ」
僕は今、多分泣いている。海水と混ざって分からないけど、多分。
目を閉じて、波に身体を任せてみた。
揺れる。押し流されて、戻ってくる。心地よい気持ちにさえなった。
最後に、君に会いたい。
ふとそう思った。
正直自分でも、どうして海にいるのかわからない。記憶もない。
だけどたったひとつ思い残すとするなら、僕のこの恋心なんだ。
突然僕の前に現れた、天使のような君。
あっという間に僕は恋に落ちた。この海底に沈むよりももっと早く。
例えるならそう、木になったリンゴがニュートンの目の前で地球に吸い寄せられたように。
好きだ。
君のことが、誰よりも。
僕の手を誰かが握っている。ここは海だというのに、誰かがいる。
ぐい、と強い力で引き上げられる。
僕は空気を求めて、肺を大きく膨らます。息を吸い込む。酸素を探す。
目を開ける。
そこには君がいて─そして、僕は生きていた。
僕は多分、それを知るより前に泳げないことを自覚していた。
バタフライや背泳ぎなんて以ての外で、クロールさえ15mが限界。
そんな僕は今─溺れている。
水面って日に照らされたら白っぽく見えるんだな。
なんて、このタイミングでそんなことを考えた。
自分の口からボコボコと気泡が水面に近づいていって、反対に僕の身体は海底へと引っ張られる。
「あぁ、死ぬ」
僕は今、多分泣いている。海水と混ざって分からないけど、多分。
目を閉じて、波に身体を任せてみた。
揺れる。押し流されて、戻ってくる。心地よい気持ちにさえなった。
最後に、君に会いたい。
ふとそう思った。
正直自分でも、どうして海にいるのかわからない。記憶もない。
だけどたったひとつ思い残すとするなら、僕のこの恋心なんだ。
突然僕の前に現れた、天使のような君。
あっという間に僕は恋に落ちた。この海底に沈むよりももっと早く。
例えるならそう、木になったリンゴがニュートンの目の前で地球に吸い寄せられたように。
好きだ。
君のことが、誰よりも。
僕の手を誰かが握っている。ここは海だというのに、誰かがいる。
ぐい、と強い力で引き上げられる。
僕は空気を求めて、肺を大きく膨らます。息を吸い込む。酸素を探す。
目を開ける。
そこには君がいて─そして、僕は生きていた。