桜の鬼【完】
でも、湖雪は今、この家に来てよかったと思っている。桃花と――旭日と、出逢えたから。そうだ、旭日だ。さっきまでわからなかった、湖雪を守ってくれていた人の名前。
旭日、そして桃花。
桃花が生まれ変わる鬼になったのは、もう一度逢いたかったからだと言っていた。
そして最期に……。
ああ、また記憶が遠くなっていく、旭日の顔が思い出せない。これはなぜなんだ? 旭日が桃花であり鬼だから? それとも早子にかかった呪詛を桃花が引き受けたから? わからない。でも、ひとつだけ予感がする。このままでは、遠からず旭日の記憶を失ってしまう。
周りに人たちはどうなのだろう。旭日のことを憶えているのか……確認、しなければ……あれ? だれのことを、訊くつもりだったんだっけ……? ―――――。