ねぇ、放さないよ?
奇妙な同居
有愛の大好きな姉が亡くなった。

事故だった━━━━━━



有愛と姉・美里愛(みりあ)は、本当に姉妹かと疑われる程に似ていない。

美人の姉・美里愛と、地味な妹・有愛。

有愛は、いつも比べられて生きてきた。

それでも有愛にとって美里愛は大好きな姉で、美里愛にとっても大切な可愛い妹だった。

両親を早くに亡くした有愛にとって、美里愛は母親代わりでもあった。



一年前に美里愛は、桜河 玄琉と結婚した。
大手商社のエリート社員。

玄琉はイケメンで賢く、何でも器用にこなす。
いわゆる、スパダリだ。


結婚前に、美里愛に紹介してもらった有愛。

「は、初めまして、妹の有愛です」
こんなカッコいい人と話したことのない、有愛。
緊張に身体を震わせながら、挨拶をした。

「初めまして、ありちゃん!
桜河 玄琉です!
気軽に玄琉って呼んでよ!」
爽やかに微笑む玄琉に、有愛の心臓は爆発寸前だ。

「そ、そ、そんな…/////」

「フフ…ね!玄琉、可愛いでしょ?私の妹!」

「あぁ!可愛い!」

(可愛いって、この人……どんな美的感覚なの?
いや、ちょっと待てよ…
お姉ちゃんの前だから、お世辞を言ってるんだ!
うん、そうに違いない!)

「あ、ありがとうございます」


しかし玄琉は、それから有愛に会いに来るようになる。
「ありちゃん!」
「へ!?
お兄さん!?どうしたんですか!?」
「近くまで来たから、お茶でもどうかなって!」


「ありちゃん!」
「あ、お兄さん!」
「一緒に映画行かない?
美里愛が、急に仕事みたいでさ!」


「ありちゃん、今日暇?」

“ありちゃん”“ありちゃん”と、よく有愛の職場前で待っていた。



そして結婚式を一ヶ月後に控えたある日━━━━━━

「え!?私も!?」
「えぇ!」

「いくらなんでも、邪魔だよ!!
二人は、新婚さんなんだよ!?」

なんと、美里愛から“一緒に暮らさないか”と誘われたのだ。

「でも、私も心配だし…
アリ、一人になるでしょ?」
「それはそうだけど……」

「ね?玄琉も大歓迎みたいだし、おいで?」

そして有愛は、玄琉と美里愛夫妻の家に世話になることになったのだ。

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