ねぇ、放さないよ?
鳥籠
そんな時だった━━━━━━━

「有愛ちゃん!お疲れ!」
「あ、野舘(のだて)くん!お疲れ様!」

野舘 進治(しんじ)
有愛の同期の社員だ。

「有愛ちゃん、話したいことがあるんだ。
付き合ってくんない?
━━━━━━━」


「━━━━━ごめんね、急に」
職場を出て、駅裏の公園に向かった二人。

「ううん!でも、どうしたの?」
缶コーヒーを飲みながら、進治を見上げる。

「……………あの…さ」
「うん」

「………/////」
「野舘くん?」

「有愛ちゃんって、彼氏いる?」

「え?
ううん、いないよ」

「そっか」

「うん…
…………ん?それが、何?」

「………俺、有愛ちゃんのこと好きなんだ!」

「うん。
……………ん?
…………え━━━━━!!!!?」

「俺の彼女になって!」

「あ…えーと……」

「考えてもらえる?
返事は、待つから!」

「うん…」



「━━━━りちゃん!
有愛!!」
「………っあ!へ!?な、何?」

「それ、僕のセリフ!
どうしたの?ボーッとして」

その日の夕食。
箸が進まず、ボーッとしていた有愛。

玄琉が顔を覗き込んでいた。

「あ、ううん!」
「なんかあった?」

“告白された”
今までなら、普通に言えていた。

しかし、何故か言えなかった。

言うと、とんでもないことが起きそうで…………


進治は、よく有愛を気遣ってくれる優しい男性だ。
好意はもっていた。

でも有愛にとって、玄琉は憧れの男性だ。
玄琉は、いわゆるハイスペックイケメンで、優しくて穏やかで、何でも器用にこなす完璧な人間。

玄琉の恐ろしさがなければ、美里愛がいない今、完全に好きになっていたはずだ。

でも…………



有愛は後日、進治に返事をした。

「私、憧れの人がいたの」
「うん」

「その人とは、今まで通り“普通”でいたい。
こんなこと、失礼かもしれないけど……
野舘く………いや、進治くんとお付き合いしてその人への想いを絶ちきりたい!
ダメ…かな…?」

「いいよ!
俺も、有愛ちゃんに好きになってもらえるように頑張るよ!」


「ありがとう……!
これから、よろしくお願いします!」

二人は、微笑み合い握手した。
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