ねぇ、放さないよ?
「有愛」

「………え?」

「僕はね。
有愛のこと、愛してるよ」

「え?お兄さん…?」

「…………はぁ…いい加減、やめない?
その“お兄さん”呼び」
ため息混じりに言う玄琉。

「え?え?」

「僕の名前、なーんだ!」
「え?」

「言って?
僕のな、ま、え!」

「…………玄琉さん」

「はい、正解!
………ねぇ、呼んで?」

「………」

「有愛、呼んで?
その可愛い口で、僕の名前」
玄琉の手が、有愛の口唇に伸びてきてなぞる。

「し、玄琉…さん…」

「うん!可愛い、可愛いなぁ…有愛…」

「あの……お兄さん」

「あ?今、何っつった?」

「え?あ、し、玄琉さん!」

「うん!
…………次、僕のこと“お兄さん”って言ったら、お仕置きするからね!」

「………」

「有愛、返事は?」

「は、はい…!」

「ん。いいお返事!
で?なぁに?」

「お兄………あ、玄琉さんは、いつから知ってたの?
進治くんのこと」

「最初から。
休みの日に、僕のとのデートを有愛が初めて断った日から。
有愛、わかりやすいんだもん!
“友達”じゃないことは、なんとなく察しはついてたよ」

「そう…なんだ……」

「有愛も、僕を愛してくれてると思ってた。
僕はずっと有愛だけに愛情を与えてたから、当然有愛もって。
まさか、浮気するなんてね!」

「“浮気”って……
玄琉さんは、お姉ちゃんの旦那さんだよ?」

「━━━━━━チゲーよ!!」

「え?」



「僕は“最初から”有愛“しか”愛してない。
美里愛は、有愛を手に入れる為の“道具”」


「え………」


「もう…いいかな……
━━━━━有愛、教えてあげる。
僕が、どれ程有愛を愛してるか。
“俺の腕の中で”」

「玄琉…さ……」

椅子から立ち上がった玄琉。
ゆっくり有愛に近づき、軽々と抱き上げた。


そして自室のベッドに下ろした。
有愛を組み敷き、顔を近づけキスをした。
「━━━━━んんっ!!?」

「わ…ヤバ……有愛の口唇、気持ちいい……!!」

「お兄さん、やめ━━━━━」
「有愛!!!」

「あ……」
(ヤバ……)

「そんなに、お仕置きされてぇの?」

「ご、ごめんなさい!!
玄琉さん、ごめんなさい!」
有愛は、あっという間に目が潤み涙が溢れていた。


「あ…泣き顔、可愛い……/////」

目の前にいる玄琉は、もう……



有愛の知っている、玄琉ではなかった━━━━━
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