ねぇ、放さないよ?
まず僕は、美里愛を手に入れることにした。

それは直接有愛に声をかけても、謙遜ばかりして本気にしないとわかったから。


一度、有愛に声をかけてみたのだ。

でも顔を真っ赤にするばかりで、全く僕を受け入れる要素がなかったから。

それに、美里愛に“あんなイケメンは、遠くから眺めるだけで十分”と言っていたのを聞いたからだ。



美里愛を必死に口説き落とし、交際にこぎ着けた。

有愛に会わせてもらえないか美里愛に聞いても“恥ずかしがって、有愛が嫌がる”と言われるばかりで、なかなか会えない。

だから、美里愛との結婚を決心したのだ。

僕としては、結婚は有愛としかしたくなかったが、有愛を手に入れる為にはやむを得ない。

結婚となれば、美里愛のたった一人の家族である有愛は、会わざるをえない。


そして、僕はやっと……有愛と直接会うことが出来たのだ。



「初めまして、ありちゃん!
桜河 玄琉です!
気軽に玄琉って呼んでよ!」

可愛い……
なんて、可愛いんだ!

顔を真っ赤にして、挨拶する姿。
可愛くてしかたがない。



一度、会ってしまうとこっちのものだ。

僕は色々理由をこじつけて、有愛をデートに誘った。
美里愛の仕事が毎日忙しいのも、好都合だった。

美里愛の仕事の忙しさを理由に、有愛をことある毎にデートに誘ったのだ。


結婚を一ヶ月後に控えた頃。
美里愛から、素晴らしい提案が出された。

「お願いがあるの」
「ん?」

「有愛も、一緒に同居させちゃダメかな?」

「え?」

「ほら、私と二人だけの家族でしょ?
過保護って言われるかもだけど、心配なの。
一人暮らしさせるの」

ダメなわけがない!
むしろ、幸せすぎる提案だ。

「もちろん、いいよ!
心配だよな……」

僕は、できる限り冷静に微笑み言った。

でも、心の中は“幸福感”でいっぱいだった。
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